第一章

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(なんで俺はここにいるんだ…?) とある世界のとある国のとある学園の中で現在入学式が行われている。ここにいるのは当然新入生。その新入生の一人、ルイス・ウィリアはふとそう思った。 別に彼が記憶喪失というわけではない。正確に言うと自分がいるべき場所でない場所にいるのは何故か、そう思ったのである。 彼がいるのはウィリアム学園の高等部にある講堂の中。その中の後ろの方にある座席にいる。実は年齢偽って新入生やってます、とかでもない。彼は今年で16になり、そして自分以外の新入生もそうであるはずだ。いや、もしかしたらそれは後から植え付けられた記憶かもしれない。そんな若干現実逃避をしていると生徒達が少しざわついているのに気づいた。 さすがに式典中に頭ごと動かして周り見るのも憚られるので目だけを動かしてみる。するとどの生徒も前ーー正確には壇上ーーを見ている。彼も壇上へ目を向けるとそこにいるのは一人の女子生徒。それを見て彼は一人納得した。自分と同じ黒い髪を腰の辺りまで伸ばしている彼女は有名人である。その人の目を惹く容姿も理由の一つではあるが、それだけではない。彼女の名前はサラ・ハーミット。この国、フォルス王国の貴族の中でも最上位に位置する特級貴族ハーミット家の長女であり次期当主だ。その美貌と地位によって国内だけでなく世界中で有名である。 そんな彼女が壇上にいるのは彼女がこの学園の新入生であり、新入生代表として挨拶をしているからである。その挨拶も終わりサラが壇上から立ち去る直前、ルイスは彼女と目が合った。とはいえそれは運命の出会い的なものではなく、宿敵に会ったかのような目を向けられたが。それは一瞬でサラはすぐ壇上からいなくなる。ルイスはその一瞬の出来事を無かったことした。だが頭の中では彼女のこと、いや彼女の家について考えている。 ハーミット家は特級貴族の中でも特に力のある家である。代々優秀な魔法使いを出し歴史に名を残した人物も大勢いる。それはハーミット家だけではなく他の特級貴族もそうであり、特級貴族とはそういうものーーつまり魔法使いを輩出する家の中でも特に優秀な魔法使いを数多く輩出している家ーーの集まりなのである。 そして「魔法使い」これこそがルイスが今現在頭を悩ませている原因なのである。
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