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「まあ、今回は別の理由もあるだろうけどな。」
ルイスは溜め息を吐いてそう言う。
「別の理由?」とカイが尋ねようとするがその前にルイスの名前が呼ばれる。
「久しぶり、ルイス君。」
その声が聞こえた瞬間、ルイスはこの場から立ち去りたくなった。が、呼ばれているのに無視するわけにもいかず(いっそ別の『ルイス君』がいると思って素知らぬ顔をしようとも思ったが)自分のところへ来ている女子生徒へと体ごと意識を向ける。
「お久しぶりです、会長。」
返事をしながら自分を呼んだ女子生徒を見て、この人は変わらないな、とルイスは思った。
「そちらの方はお友達かしら?はじめまして、ウィリアム学園高等部の生徒会長を務めています、エリス・ナーディです。よろしくね。」
「あ、カイ・レイナードです。よろしくお願いします。」
にこやかな笑顔のエリスの言葉に少し反応が遅れかカイが名乗り返す。
「会長、お話の方はよろしいので?」
ルイスは視線をエリスが来た人垣の中の人物、サラへ向ける。
「うん、今日は挨拶だけ。というか実は説明はもう終わってたりするんだけどね。一応明日もう一度するんだけど。」
この学園では新入生代表を務めた生徒は生徒会へのオファーが来る。新入生代表は入試の総合成績の主席が務めることになっている。これは高等部に限った話ではない。そして中等部のときもサラは新入生代表を務め生徒会へと入っている。
そしてそのときもの生徒会長もまたエリスであった。そのため二人共慣れたものであるので話もスムーズに進んでいるのだ。
「ルイス君も惜しかったね。」
「そうなんですか?」
急に変えられた話題にルイスは戸惑うことなく返す。エリスは笑顔のまま話す。
「うん、入学試験筆記平均点97点。文句無しのトップだったって。前代未聞の高得点だってさ。相変わらず凄いね。」
「相変わらず実技は駄目ですがね。」
エリスの言葉に苦笑しながらルイスは言った。筆記試験の結果に謙遜したりはしない。彼女がそれを望んでいないのは長年の付き合いで知っている。
しかし二人の会話を聞いていた人垣は騒がしくなる。
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