第一章

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この世界の人々は誰しもが魔力を有している。人によって保有している魔力の量は違えどそれは世界の常識である。 魔法は人々の生活に密接に関わっている。肉を焼く炎、闇夜を照らす明かり、そして力として。魔法の発展は人々を豊かにした。そうして人々は魔法の発展のために集い、その中から支配者が生まれ、やがて国となる。国と国が争い国が滅びあるいは繁栄していく。その中で魔法は争いの力となり更に発展を遂げる。そうして繰り返される歴史、それは今現在も続いている。 争いの力である魔法、それを使う魔法使い。彼らは魔法の発展、そして軍事力として欠かせない存在となった。しかし現在、世界中の人間が魔法使いというわけではない。確かに誰もが魔力を持ち魔法を使うことができるという意味では魔法使いだが、今の世界における魔法使いとは意味が異なる。今の魔法使いとは文字通りの"魔法を使う者"といった意味合いではなくどちらかと言えば職種としての意味合いで使われている。前に述べたような魔法の発展、あるいは軍事力に関わる人間が魔法使いと呼ばれている。 そしてそういった魔法使いを育成するための場所がウィリアム学園のような魔法学校である。魔法使いを育成とは言うものの魔法学校に入学した時点で(正式にではないが)魔法使いとして扱われている。というのも魔法学校の入学試験は魔法使いとしての適正試験のようなものであり、魔法学校の生徒はほぼ全員が卒業後魔法使いとして社会にでる。 魔法使いはこの世界において非常に重要視されている。そのため魔法使いであること、あるいは魔法使いの卵として魔法学校生であることはこの世界においてステイタスなのである。 魔法学校の入学試験は他の普通の学校よりも難しい。はっきり言ってしまえば魔法使いとしての才能が必要である。そしてこの国において魔法使いの才能がある者、つまり魔法学校の生徒は大半が貴族の血筋の生まれである。これはより優秀な魔法使いの血を求め優秀な家系同士が交わり、その結果として生まれた優秀な子達は優秀であるが故に貴族となり、そしてまた優秀な血を求め、といった具合で魔法使いとしての優秀な血筋が貴族に偏った結果である。 その結果、貴族達の中には本来の貴族としての意味合いを忘れ平民より優れた人種であるという間違った階級制度の捉え方をする者が現れ増長しているのが現実である。 そしてルイスの前にまたその現実が姿を現した。
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