第一章

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ルイスはどうしたものかなと思いつつ目の前の状況を見ていた。彼はこの学園、いや魔法使いという枠において俗に言う落ちこぼれである。 「だ~か~ら~別にルイスが誰と話して誰と仲良くしようがお前には関係ねえだろうが!」 「平民の落ちこぼれが高貴で遥かに優れている貴族に気安く話し掛けるなど以ての他だ!」 「別にお前と話してねえだろうが!口出しすんな!」 「だいたいこれはルイスとナーディ先輩の問題であって君には関係ないでしょ。」 「なんだと!」 ここ最近というか入学式以来ほぼ毎日エリスと偶然ーー少なくともルイスはそう思っているーー会っていると初めはきつい視線が飛んでくるだけだった。しかし耐えられなくなったのか貴族達がルイスに難癖をつけ始めた。 ルイスとしては最早慣れたものでもあり軽く流していたのだが、そんなことは知らないマリクが真っ向から対抗したのである。マリクとほぼ同時にカイも反論する。マリクはこの数日の付き合いで予想通りといった反応だったが、まさかカイもそれに加わるとは思っていなかった。 どちらかと言えばカイはルイスのような対応をするか、マリクを落ち着かせる役回りだと思っていたのだが割と熱いタイプだったのにルイスは驚いていた。 そうしてルイスが静観していると口論の議題(?)が変わり始めていた。 「貴族がどうたら言ってるが別にお前は偉くないだろ!」 「君の両親や先祖達が国に貢献したりしたことによって今の地位があるわけであって君は何もしていない。今の君は親の七光りで威張っているだけだよ。」 マリクとカイの発言を聞きちょっとまずいかな、とルイスは思った。 そもそもここフォルス王国の貴族は世襲制ではない。王国に大きな貢献をしたり国政に携わる人間が貴族としての地位を与えられるもので当初は一代限りのものであることが多かった。それがいつしか世襲していくようになり、それが当たり前になってしまった。実は今も世襲制は法としては認められておらずカイの発言はそれによるものである。だがこの半ば当たり前になっている世襲制に甘んじているが故に貴族達はその正論を力で捩じ伏せるのだ。
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