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汚いカッコの女の話は、やはり身の上話だった。
2年前まで普通だった家庭。両親と自分の3人暮らし。裕福ではないけれど、ごくごく普通の家庭だった。……両親が病で相次いで逝くまでは。
引き取ってくれた親戚は、優しかった。……最初だけ。
アパート暮らしだった親戚一家が、両親が苦労して建てた家を乗っ取るまでは。乗っ取られた事が判った日は、忘れない。
学校帰りに、古ぼけたバッグが1つ玄関に有った。その中身が自分の服だ、と直ぐに解った。どういうことか解らないまま、家に入ろうとすると、鍵がかかっていた。
開けようとしたら、鍵が入らない。……替えられたのだ、と解った。
「そこから先は、このカッコの通り。バイトをしながら生活を支えたくても、給料を振り込む通帳さえ無い。日雇い仕事は、女は無理。と断られ……この公園や、別の所で寝床を確保する日々で、もう2年……」
淡々とした声が却って不気味だった。
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