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喉がカラカラに渇いていた。
急に水が飲みたくなった。自動販売機はすぐそこだ。青いラベルの水のペットボトルが視界に入る――
でも、身体はやっぱり動かない。水分が無くなった空のペットボトルみたいに。
女の顔が、ゆっくりと思い出と重なっていく。誰が思うだろう。こんな痩せこけた肌がガサガサの髪がパサパサの汚いカッコの女が――
両親が追い出した家の正統な持ち主……再従兄弟のお姉ちゃん、だなんて。
「あ……うっ……ぃい……ひーぃーひーひーひー……ぅあ。ぉおねぇ……ちゃん」
強がっていた私の目からぼろぼろと涙が零れ落ち、拭っても拭っても後から後から零れ落ちる自分の水分を、私はそれこそカラカラになるくらい、出し続けた。
「やっと気付いたんだ」
淡々とした声が変わらない。
変わらない事が――怖い。
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