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「お帰りなさいませ、お嬢様」
都内某所にある高層ビルの地下に、その店はある。
執事喫茶【ファントム】
執事喫茶なのに、ファントム=幽霊という名前なのには、わけがある。
「彼を」
初めての客だろうと、常連客だろうと、お目当ての執事がいる。
「畏まりました。お嬢様。只今参りますが、それまで何をお召し上がりになられますか?」
「今日は甘酸っぱいベリーのケーキが食べたい気分よ」
「畏まりました」
この間に、お嬢様こと客は、席に案内され、本物のお嬢様の如く、椅子を引いてもらい、座れば直してもらい、テーブル上にある一輪挿しに薔薇の花が生けられる。ちなみに、今日の薔薇は白。
燕尾服の執事は、初めて会うお嬢様ならば、その好みを然り気無く把握しなければならない。
決して、「初めてですよね?」とか「何を飲みますか?」などと口にしてはいけない。執事失格である。
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