喫茶店『コスモス』

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 次の日の朝、春樹は四時の目覚ましでパッチリと起きた。今日は新商品の準備のためにいつもより早起きである。横を見ると、ちぃももが自分のベッドで寝息をたてていた。春樹はもぞもぞと布団から出て朝食を作り始めた。その音が聞こえたのか、ちぃもももあくびをしながら体を伸ばし、朝ご飯をねだりにキッチンにいる春樹の足元に座った。朝食はお味噌汁にご飯、おかずは昨日の夕食の残りをレンジで温めるだけの簡単なものが多い。  すべての準備を整えると、春樹は昨日準備したリュックをもう一度確認し、ちぃももを抱いて家を出た。自転車のカゴにふかふかの毛布を敷いてその上にちぃももを乗せた。  「行くよ、ちぃもも。」  そう声をかけ、春樹は自転車を漕ぎ始めた。今日の天気は快晴。寒すぎず暑すぎず、過ごし易い時期である。薄手のグリーンのパーカーを羽織っている春樹は、軽く袖をまくった。  ちぃももは、『もう慣れっこです。』と言うかのように、流れていく景色を眺めている。いつも通り商店街を抜け、まっすぐと道を進んでいく。心地良い風を楽しんでいるうちに、喫茶店『コスモス』へと到着した。  お店の前に着くと、ちぃももは自分で自転車のカゴから飛び降り、玄関の前で日向ぼっこを始めた。  春樹はお店に入り開店作業を始める。お店で育てている野菜のチェックをしに裏へ回ると、一匹の猫が日向ぼっこをしていた。真っ白の細身の猫は、春樹の姿を見ると慌てて起き上がり、茂みの陰に身を隠した。春樹は一度お店に入り、戻って来た時彼は小さな器を持っていた。中にはミルクが入っていて、春樹はそれをそっと下に置いた。すると、白い猫はゆっくりと警戒しながら器に近づき、ミルクの匂いを嗅いだかと思うと、ペロッとそれを飲んだ。春樹はそれを見ると、安心したように店の中に戻った。  今日の開店準備はやることが山ほどある。まずは桜のシフォンケーキを焼くこと。そして昨日作っておいたスープご飯で使う昆布出汁のスープやパスタにつくコンソメスープを温める。更にパスタで使うホワイトソースを作ってサーモンや野菜を適当な大きさに切り冷蔵庫に入れる。春樹は自分で作ったレシピを見ながら次々と準備を進めていった。
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