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「でも、なんで急にオレンジ色のポピーから赤いのにしたんでしょうね?」
光里は首をかしげた。
「それは私もわからないわ。私がオレンジ色のポピーが好きなのも知ってたし…。」
叔母さんも首をひねった。
「ご主人は入院される前から植物を撮るの好きでしたか?」
「うーん、植物を撮るようになったのは最近よ。そうそう、主人が入院した時に、退屈だと思って私が本を持って行ってあげたのね。その中に植物の本があって、それからね~。」
叔母さんはパチンと指を鳴らして言った。
「失礼ですが、その本見せていただくことできますか?」
春樹が言うと、叔母さんは『もちろん!』と言って奥から植物の本を持ってきた。春樹は丁寧にそれを受け取ると、ぱらぱらとそれをめくった。
「何を見てるんですか?」
光里も本を覗き込んだ。
「なるほど、わかりました。ご主人が急にオレンジ色のポピーではなく、赤いポピーを買ってきたのか。」
春樹はそう言って、本のてきとうなページを開いてカウンターに置いた。
「ここを見て下さい。」
春樹はガーベラのページの右下の囲いを指さした。光里と叔母さんは指さされたところを覗き込む。そこには“花言葉 希望”と書いてあった。
「花言葉?」
光里は首をかしげた。
「そうです。ご主人は、入院している時にこの植物図鑑を観ていらっしゃった。この植物図鑑には花言葉が載っています。ご主人はきっと、この本でポピーの花言葉を知ったんです。赤いポピーの花言葉、ご存知ですか?」
春樹の問いに、二人は首を横に振った。
「赤いポピーの花言葉は“感謝”です。きっとご主人は、入院している自分に代わってお店を続けてくれている、そして自分の世話までしてくれる奥さんに感謝の気持ちを籠めてオレンジ色ではなく赤いポピーを送ったんです。この本のポピーのページを開いてみて下さい。」
春樹は植物図鑑を叔母さんに手渡した。叔母さんは言われた通りにポピーのページを開いた。その花言葉の欄には“赤いポピー:感謝”と書いてあり、そのページの角は目印のように折ってあった。
「じゃあ、叔父さんはポピーなら何でもいいって思ってたんじゃなくて、あえて赤いポピーを選んだってこと?」
光里は目を輝かせながら言った。その問いに春樹はうなずいて微笑んだ。
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