4人が本棚に入れています
本棚に追加
目的地の公園に着くと、春樹はリュックから一眼レフのデジタルカメラを取り出した。
「これを首にかけてみて下さい。」
光里は春樹からカメラを受け取って、言われるようにした。もうその姿はカメラ女子のように見えた。
「うわっ、カメラって重たいんですね。」
「そうですね、ずっと首から下げていると肩凝っちゃいます。」
そんな他愛もない会話をしながら、春樹は光里に写真の撮り方を教えていった。カメラの持ち方やついている機能、撮影の対象になるものを被写体ということまで。光里はうんうんとうなずきながら春樹の丁寧な説明を聞き漏らさないよう注意深く聞いた。
「と、まぁこんなところかな。一枚撮ってみますか?」
撮影に必要な最低限のことを伝えた春樹は、『実践あるのみ!』と言ってうながした。光里近くの花壇に咲いている白い花に狙いを定めた。春樹に教えられた持ち方を再度確認し、被写体にレンズを向ける。
____パシャ。
光里は撮った写真を確認した。液晶モニターには、今光里が撮った花が咲いている。初めてにしてはとてもよく撮れていた。
「綺麗ですね。撮ってみた感想はどうですか?」
春樹は横からモニターを覗きながら言った。光里はカメラから顔を上げた。
「面白い!写真を撮るのって、すごく面白いですね!」
光里は笑顔でそう言うと、今度は別の角度から白い花を撮った。楽しそうにシャッターを押す彼女を春樹はしばらく見ていたが、自分も鞄からフィルムカメラを取り出して写真を撮り始めた。
そうしながら二人は公園をどんどん進んでいき、公園中央の噴水まで辿り着いた。写真を撮るのに夢中になっていた二人は、疲れたようにベンチに座った。時間は十二時を少し過ぎていた。
「もうこんな時間?写真撮るのに夢中で全然時計見てなかった!」
光里はアンティークな腕時計を見ながら言った。
「そうですね、お昼にしましょうか?」
春樹はそう言うと、リュックの中からあまり大きくない紙袋を取り出した。その中には丁寧にハンカチで包まれたサンドウィッチと水筒が入っていた。
「え、これ…。」
光里はサンドウィッチの包みの一つを手渡された。
最初のコメントを投稿しよう!