素敵なピクニック

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 「今日、散歩に付き合ってくれたお礼です。栃蜜のサンドウィッチと、僕の小さい畑で採れた野菜を使ったサンドウィッチです。あ、あと紅茶。」  春樹は楽しそうに包みを開いてサンドウィッチを食べ始めた。光里もつられたようにサンドウィッチの包みを開いた。『いただきます。』と手を合わせて栃蜜のサンドウィッチを齧った。すると、栃蜜の上品な甘みが口の中に広がり、光里は驚きのあまりサンドウィッチを見つめてしまった。  「あ、口に合いませんでしたか?」  春樹は少し申し訳なさそうに言った。すると、光里はぶんぶん首を振った。  「そんなことないです!これすごく美味しい!この栃蜜…でしたっけ?初めて食べました!甘いのに甘すぎなくて…上手く表現できないけど、幸せ!」  光里は興奮したように言って、もう一口それを齧った。春樹は安心したように自分も食事を続けた。『ピクニックみたいですね。』と光里が少し懐かしむように言った。春樹は『そうですね。』とだけ言ったが、今の光里の言葉が胸になんとなく残った。二人はランチを楽しみながら、光里が撮った写真を見ていた。花の写真が多く、白い花だけではなく、桜やタンポポなども収められていた。  「あの、これ何ていう名前のお花かわかりますか?」  光里は圧倒的に多い白い花の写真を指さした。  「あぁ、これはマーガレットです。可愛いですよね、花言葉は“真の友情”。」  春樹はニコニコしながら答えた。  まるで図鑑を暗記しているようにすらすらと説明がでてくる。そんなところが、春樹は光里の初恋の男の子にそっくりだった。と、内心そんなことを考える。  『懐かしいな…。』  そして春樹が入れてくれた紅茶を一口飲んだ。口の中に苺の香りがいっぱいに広がる。  「これ、苺の紅茶ですか…?」  光里の問いに春樹はうなずいた。  「去年の四月の季節商品です。結構人気だったんですよ。」  光里は『へぇ~。』と言って、もう一口飲んで『美味しいです。』と言った。
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