素敵なピクニック

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 あっという間に時間は経ち、すでに四時を過ぎていた。二人ともだんだんと歩き疲れてきていた。  「そろそろ帰りましょうか?」  そう切り出したのは春樹である。光里はちょっと残念そうではあったが、時間も時間だったので仕方なくうなずいた。  二人は入った場所と同じ門から出て、喫茶店『コスモス』まで歩いた。コスモスの前に着くと、春樹はお店の鍵を開けて『どうぞ。』と光里に言った。光里は遠慮しながらもお店に入り、春樹に言われるままいつものカウンター席に座った。春樹は店の奥に行くと、すぐに大きな機会を抱えて戻って来た。それは写真のプリンターとノートパソコンだった。春樹はパソコンの電源を入れてカメラをコードでつないだ。  「せっかく撮ったんですし、何枚かプリントしてみませんか?」  春樹はそう言って、パソコンが立ち上がる間にカウンターでコーヒーを淹れ、光里に一つを渡してもう一つを飲んだ。そして光里の隣に腰を下ろし、パソコンに“戸部さん”という名前のフォルダーを作り、そこに光里が撮った写真を移した。  「どれも綺麗ですね。好きな写真、ありますか?」  光里は最初の方に撮ったマーガレットの写真を指さした。春樹はそれの他にも何枚か選んで印刷ボタンを押した。プリンターからゆっくりと写真が印刷され、春樹はそれを光里に手渡した。  「うわぁ…。」   光里は初めて撮った写真に、そしてそれが今手元にあることに感動していた。そして、キラキラと目を輝かせている光里の横で、春樹は優しく微笑んだ。  「面白いでしょ、写真も。撮ってすぐに印刷できると感動しますよね。」  春樹の問いに、光里は何度もうなずいた。そして一枚一枚の写真を眺めると、それらを大切そうにしまった。
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