4人が本棚に入れています
本棚に追加
「○○君、元気でね。お手紙、絶対書くからね。ちゃんと、お返事頂戴ね。」
下を向いていた少女が、顔を上げて無理矢理笑った。顔は涙でぐちゃぐちゃで、それでも少女は笑っていた。少年はそんな少女に負けまいと、必死で笑った。
「うん…。」
少年の目から、涙が一筋零れた。それでも少年は、いつものように優しく微笑み、うなずいた。
二人の間に沈黙が流れた。お互いに黙って見つめ合い、次の言葉を探しているようだった。それからしばらくして、口を開いたのは少年だった。
「○○ちゃん…約束しよう。僕が大人になったら必ずここに戻って来るよ。だから…だから、それまでここで待ってて。僕と○○ちゃんが大人になった時の集合場所。この時間にこの場所。僕、絶対に○○ちゃんのこと幸せにするから!だから…またここで会おう。」
少年はギュッと握り拳を開き、その手を差し出した。
少女はにっこりと笑い、その手を握った。
そして、思い出したように『あ、これ…。』と言って、少年はポケットから薄い紙のような物を取り出した。それは、小さな栞だった。それも、ピンク色のコスモスが押し花になって挟まっている、可愛い栞。少女は『わぁ!可愛い、ありがとう!』と言って、大切そうにポケットにしまった。そして、自分は何かあげられる物は無いかと、ポケットをひっくり返したりバックの中を探したが、何も見当たらないようだった。そして、思い出したように頭に手を持っていき、少女が一番大切にしていた赤いお花のヘアピンを外し、差し出した。
「○○君は使わないよね…?」
ちょっと申し訳なさそうに少女が言うと、少年は微笑みながらそれを受け取った。
「ありがとう、大切にするよ。」
そう言って少年はヘアピンを大切にポケットにしまった。
少女は嬉しそうに笑った。
二人はその場で別れ、お互い別々の方向に歩いて行った。
最初のコメントを投稿しよう!