喫茶店『コスモス』

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 また、このアパートはペットが許可されているので春樹はお店の前で拾った仔猫(拾ったときは仔猫だった。)の『ちぃもも』と一緒に生活している。拾ったときはマグカップに入るほど小さくて桃のように丸っとしていたから『ちぃもも』である。赤茶色と白の混ざった柄のちぃももは、今では土鍋が丁度良いくらいの大きさまで成長し、少し太ってさえいる。  「ちぃもも、ただいま。」  春樹が玄関まで起きてきたちぃももの頭をよしよしと撫でると、ちぃももは気持ちよさそうに春樹のズボンに頭を擦り付けた。春樹はちぃももを抱っこして部屋に入り、ソファに腰を下ろした。部屋の中はいたってシンプル。ベッド、ソファ、テレビにパソコン。壁にはお店の隣にあるコスモス畑の写真が飾ってあった。  春樹はちぃもものご飯を作り、自分も簡単に夕食を済ませた。喫茶店を営業していることもあり、料理は得意。自炊は普通にこなしている。朝も強い方なので、しっかりと起きて洗濯と掃除をして朝食も作って食べている。  春樹はテレビの隣に置いてある卓上カレンダーに目をやった。今日は三月三十一日、金曜日。春樹は次のページにカレンダーをめくると、予定を確認した。四月一日土曜日には黒いペンで『ちぃもも』と書かれていて、その下には『新メニュー開始』と書かれている。 毎週火曜日、木曜日、土曜日はちぃももを連れてお店に行く。ちぃももはその週に三日間だけお店の看板猫として働いているのである。ちぃももがお店にいる時を狙って来るお客さんもいるほどちぃももは人気者で、お店の近くをいつもうろうろしたり、日向ぼっこしたり、顔を覚えているお客さんには挨拶をする。  シャワーを浴びた春樹は、パソコンに向かった。最近、お店のホームページを作り始めたのである。内容はお店の場所や営業時間、メニューなど。また、お客さんからのご意見ボックスや写真なども載せている。もちろん看板猫のちぃももも。  春樹はメールのチェックなどを済ませ、明日から春の新商品を出す予定のため、最終チェックをし始めた。パソコンには新しいメニューの作り方が書いてある。
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