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おれは自宅である六畳半のワンルームに戻ると、息吹を起こさないようにローテーブルの上にそっと置き、スライド式の携帯電話を確認した。
数年前に「この夏の最新モデル」という触れ込みに負けて買ったものだ。
決して使い勝手はよくないが、特にどこが壊れるわけでもなく、かつ、スマートフォンなどというものに興味を示す年齢でもなかったので未だに愛用している代物だ。
他にも仕事用にプリペイド式携帯を二台ほど持たされていたが、どちらもここへ来る道中に砕いて捨てた。
数年前までは最新モデルだったスライド式携帯は、ミゾグチからの着信を四件、メールを一通受信していた。
内容は、道草食ってないで早く取るもん取って帰って来い――という内容に思いつく限りの罵詈雑言を添えたものだった。
今になって恐怖感がこみ上げる。だが、不思議と後悔は無かった。
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