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高校時代につきあっていた年上の男と半ば駆け落ちするかたちで実家を出て、すぐに妊娠。しかし、男の浮気が発覚したことによって、今にいたるというわけだ。
両親とはここ何年も連絡をとっていないようで、事実上の身寄りがなく、アルバイトを転々としながら暮らしているため、実家にも職場にも催促のしようがなくて手を焼いている。
本来の負債額はすでに完済しているのだが、連絡を入れるたびに、「いつか必ず返します」というので、ミゾグチの恰好の餌食となってしまった哀れな女性だ。
おれは彼女が住むアパートの一室の前に立った。
まともな神経が通っていれば、こんな女性から理不尽な金利を取り立てる気になんてなれるはずがない。
事実、おれは何度かこのドアに触れることもなくこの場をあとにして、ミゾグチに嘘の報告をしたこともあった。
しかし、今回指示されたのは、ただの取り立てなどではない。“ワタヌキ”だ。
どれだけ金利を払えない負債者でも、最低限の生活をするための資金ぐらいは隠し持っているものだ。
ワタヌキはそれすらも奪い取る、いわばとどめの一撃。文字通り、腹の腸(わた)まで抜き取るといったところだ。
そしてワタヌキのような汚れ仕事に出向くのは、決まっておれのような元負債者の取り立て屋だ。
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