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部屋の中央に位置するローテーブルには、化粧品の入ったバッグ、小さなお城の形をした貯金箱、そしてその貯金箱で押さえつけるようにして、几帳面に三つ折りにされたA4サイズのコピー用紙が挟まっていた。
そのコピー用紙を抜き取って開いてみると、どうやら遺書のようだ。
その文面に目を落としてみると、内容はこうだった。
『この子の名前は息吹といいます。本来ならば、この子も一緒に連れて行くつもりだったのですが、わたしにはどうしてもできませんでした。
残酷かもしれませんが、わたしは可愛い我が子をこのような辛い世界にたった一人きりで残してしまったのです。
もし、誰かがこの手紙を読んでくれたなら、この子をお願いします。
貯金箱の中のお金はこの子が大きくなった時のために貯めていたお金です。どうぞ使ってください。』
そして、その手紙には他にもミルクの与え方やおむつの代え方などが事細かに記されていた。
部屋の隅で若いシングルマザーをぶら下げた縄がキィ……となった気がした。
野山恵美は相変わらず天井の向こうにある空を見ていた。
※
おれは自家用車に戻ると、シートを深く倒して煙草に火を点けた。
あの部屋の異臭を車内まで持ち帰ってしまったようで、窓を全開にしなければ、とてもじゃないが耐えられそうになかった。
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