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ゆっくりと煙草を吸い、半分ぐらい吸ったところで警察に知らせようか――などと考えた。 だがおれはすぐにその考えを捨てた。 おれが今までニコニコ金融でやってきたことは、どれも違法な取り立てばかりだからだ。 公衆電話から匿名で通報するという手も考えた。だが、それではおれが事件と関わりのある不審者だと疑われるんじゃないか――事実その通りなのだが――などと下らないことばかり考えてしまう。 おれは車の助手席を見た。そこにはあの若いシングルマザーの子供――名前は息吹といったか――が、先ほどまで泣きわめいていたのとは打って変わって静かに寝息をたてていた。 「どうかしてやがる」 おれは灰皿で煙草の火を押しつぶすと、車のエンジンをかけた。 その時はまだ、何故このような馬鹿げた行動を取ってしまったのか、自分でもわからなかった。 だが、確実に言えることは、もうニコニコ金融に戻るつもりなど毛頭無かったということだけだ。
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