紅い眼の男

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「おい仲原!聞こえないのか!?さっさと起きろ!」  その煩い怒号とともに、私は机の上を蛙のように飛び跳ねた。そして髪をくしゃくしゃと掻き毟り、周りを見渡す。廊下側、窓側、前、後ろ、ななめ、クラス中の生徒がじっと私の顔を見ていた。  ああ…またやってしまった…  どうやら私には授業中に眠るという特技をもっているらしい。それは困った、特技は活かさなければいけない。イコール…寝るしかない。  私はもう一眠りしようと机に寝そべろうとする。  『一瞬!』  私の頭に激痛が走った。内部のほうではなく外部のほうから、物理的な攻撃をうけた。 「なに寝ようとしているのかな?仲原さん…あんなに俺が言っても懲りないとはねぇ」  先生は教科書を手で叩きながら話してきた。ニタニタと薄気味悪い笑顔を私に見せてきて気持ちが悪い。吐き気を催す。 これは先生を本気で怒らせてしまった。  私は笑顔の崩れた出来損ないの苦笑いを返した。最悪だ。  如何やら今日は私にとって厄日だったらしい。    
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