紅い眼の男

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* この話は今より少し後の近未来の話である。 医療機関が発達し、さらに少子高齢化が進んでいる日本。外交は未だ近くの国とギスギスとしたままである。 平成の終わり頃、ある実験が行われた。それは、人類保護機関という政府の団体をある島に置き去りにするという実験だ。なぜこんなことをしたのか、それは人類保護機関という名ばかりでちゃんと人を大切にするか確認するということだった。皆でちゃんと協力できるのか…。  いまや肩書だけで生活できる世の中、一言「私は社長だ」つぶやけば周りの人はニタニタと薄気味悪く近寄ってくる。まるで甘いものにつられた蟻のように。  そんな世の中だからこそこういう実験が行われたのだと思う。  そして一年後、その人類保護団体を自宅に帰そうと船で首相自ら向かった。その島には一年分の食料や飲み物があり生きられるようになっていた。しかし…そこにいた人たちは生気がなくなったような眼をしてこっちをずっと見つめている状態だった。  そんな無謀で無益な実験が繰り返される。  私、仲原愛実もそんな世の中に生まれてきたひとりである。  無駄な法律、無駄な実験、無駄な主導者  そんな腐った世界を直したい。それが私の夢。 * 「さて、今日の日替わりランチは何かなー」  私は献立表を覗き込むようにみた。うちの食堂は食券を先に買い、作っているところに渡しに行くシステムになっている。フードコートみたいな感じだ。食堂内は、先生の愚痴や噂話、授業について、今日帰ったらなにをするかなど色々耳に入ってくる。
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