第一章 メガロポリス失陥

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 大聖堂でルナンサン達を出迎えたのは司祭だった。  慣例で、神殿騎士隊は司祭に任務の報告と 犠牲者の冥福を祈り、揺るぎない信仰を誓う儀礼がある。  別室で控えていたルナンサンは  修道僧に案内されて司教メルチェコの寝室に通された。  「・・メルチェコ様、ルナンサン殿をお連れしました」   ・・ゴホッゴホッ・・ ゴフッゴホゴホッ・・・  取次の修道僧が扉を開けて、ルナンサンが入室する。  ・・司教メルチェコは臥せっていた。  取り次いだ修道僧がメルチェコの上体を起こして  ルナンサンを傍へ招く。  息を整えたメルチェコが、  精いっぱいの微笑みを浮かべてルナンサンを労う。  「無事に・・戻ってこられタ・・ゴフ、コフッ・・フッ…   は・・ご苦労で・・った・・・。さ・・お掛けなさ・・っ」  再び咳きこんで背中を摩られるメルチェコは  出発前の姿からは比べられないほどに  甚だ衰弱して、言葉を発するのも覚束ない様子だ。  見かねたルナンサンが日を改めましょうと言うのを  メルチェコは首を振って、息を整える。  「・・天眼石は、持っておるな?」  ルナンサンが懐から輝きを失った聖石を手渡す。  「・・や・・はり光を失っておる・・   再び神力を吹き込んで、そなたに・・ゴフっ」  修道僧がメルチェコの体を戻して耳元で囁く。  メルチェコが微かに頷いてみせた。  促されるまま部屋の外へ出ると修道僧が口を開く。 「司教メルチェコは魔除けを貴方に託されるそうです。  二日後にまたおいでください。そしてもう一つ・・」  後ろから静かに赤子を抱いた尼僧がやってきて  修道僧が赤子を受け取ると会釈して去っていった。  「・・・まさか、と思いますが・・   その赤ん坊を私に引き取れというのですか・・?」  戸惑うルナンサンに修道僧は微笑して訳を話す。 「この子はセルジオ様にお届けくださいませんか。  母親は今朝早く神に召されました、とお伝えください」  安堵と、狼狽えた事のバツの悪さに恥ずかしさから ルナンサンは咳払い一つして、快く赤ん坊を受け取った。  大事に抱き寄せてみると、安らかに寝息を立てている。  赤ん坊の愛らしい寝顔にルナンサンも心が和む。
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