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今すぐにでも留学したい。
でも、春香の側にいたい。
悩んで悩んで、見付けた自分の意思は変わらずにいた。
「夏輝さ、春ちゃんの意思はどうすんだよ」
残りの食事を食べ始めながら真剣な瞳は曇らす事無く見つめてくる。
春香の意思。
きっと留学の事を言えば自分の事の様に喜んでくれるだろう。
涙も見せずに見送ってくれるだろう。
もし行かないと言えば…
「泣きながら怒るだろうな…」
「わかってるじゃん」
最後の一口をほおり込みながらご馳走様と手を合わせた竜司。
その目が訴えてくる。
わかってるならやるべき事は理解してるだろ?
どの選択肢が正解とか間違いとか、そういう訳ではない。
相手の事を思うなら、進む道は1つしかないだろと
そう聞こえてくるかのように。
「いつも言ってるけどな、絶対に後悔だけはすんなよ」
お前も春ちゃんも。
「ん…」
頬杖をついて優しく笑う竜司に夏輝も心を和らげていく。
「サンキュウ竜司。少し軽くなった」
怒るわけでもない
呆れるわけでもない
自分の欲しかった言葉では無かったが、決して二人を見放そうとしない友。
何度立ち止まっても必ず背中を押して歩かせてくれた。
教授だってそう。
夏輝の事を考えて優しくも厳しい…親のような言葉をくれる。
こんなにも思ってくれる人がいるのに、一人で解決しては落ち込んでる自分に恥ずかしく思えてきた。
「お前らが笑ってくれりゃ、それでいいさ」
「何オヤジ臭い事言ってんだよ」
ははっと笑い合いながら食堂を後にした二人は、次の学科へ行く為に別れていった。
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