桜並木 1

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唐揚げ定食がテーブルに二つ並べられ、その前には美味しそうに食べる夏輝と悔しそうに箸を握る竜司の姿があった。 「お前達が嫌いなわけじゃないんだっ!むしろ愛してる…けど、このどうしようもない喪失感どうすればいいんだっ!!!」 うるさい……。 唐揚げを見つめ出し、嘆き初めてから早5分。 食べてあげれなくてすまなかったっ… と懺悔を繰り返している。 「お前の脳ミソをどうにかしろ。そして食え」 「ひどっ!それがAランチに対する態度かよ!唐揚げ君達にも失礼だぞ」 もう、どこに何を突っ込めば良いやら。 数年竜司を見てきているが、未だに思考を読むことは出来ない。 涙しながら「今日は竜田の変わりにお前達を美味しく食べてやるからなっ」と、やっと箸をつけたのは椅子に座ってから10分も経っていた。 やっと静かになったと思う時には、夏輝は食べ終わる直前であり… 文句を言おうとしたが、いつもの事かと諦める。 そこでふと思い出したのはポケットの中の存在。 なぜ使わなかったんだ…俺! こういう時こそ使う為に持ってきていた接着剤は、活躍するタイミングを逃してそのまま眠りについた。 モグモグと満足そうに口へ運ぶ様を恨めしそうに眺めては、ため息をつく。 「食い意地の良さは春香と同じなのな」 こうして馬鹿してる時が一番落ち着く。 だが、どこに居ても誰と居ても少しの動作や感情を春香と重ねてしまう。 竜司は一瞬だけ食べる手を止めると、今までみたいなふざけた表情は無く真剣に何かを考えていた。 「春ちゃんには言ったのか?」 「ん…?」 主語を言わずに本題を聞き出す友人に、何の事か勘づいていたにも関わらず曖昧な返事を取っていた。
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