2人が本棚に入れています
本棚に追加
「……うーっ、寒いなぁ」
クロアスは縮こまるように体を丸め、口から白い吐息を吐き出しながら言った。
ここは旧大陸の北部に位置するフラヒヤ山脈。日の当たらない場所では一年中ずっと雪が溶けないとまで言われる寒冷な地域である。
今、彼はその雪原地帯を一人でさくさくと歩いていた。
服装は決して薄着というワケではない。そもそも彼の住んでいたポッケ村はフラヒヤ山脈の中腹辺りに位置していて、同じように寒いのだ。
当然、そこの村人は全員が毛糸で編まれた厚めのものを着込んでいて、それ相応の寒さ対策をして生活している。
クロアスもまた、その村では出来る限り暖かい格好をして生活を送っていた。
もちろん、村を出発する際には母に新しく編んでもらって新調したワケだが、性能的には前に着ていたものよりも勝るとも劣らず。
……そんなワケで暖かいはずの服装だった彼だが、想像以上に自然というものは厳しかった。
一歩進むたびに、厳しく尖った冷風が頬を刺し、厚いはずのコートをすり抜け、徐々に体温を奪う。
最初のコメントを投稿しよう!