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充分に身体を作り上げ、村に対する脅威のない日々が続き、彼は十八歳の誕生日という記念日を迎えた。
故に本日は絶好の旅立ち日和ということである。
「それにしても、メゼポルタにはいつごろ到着するのかねぇ」
寒さに細かく震える上半身を両腕で覆うようにして丸くなり、クロアスはぼそっと呟く。
村を出てから数十分が経過しているが、当然のことながら未だにフラヒヤ山脈すら下りきってはいない。
本人も、この旅が長丁場になるであろうことは一応ちゃんと覚悟している。
ポッケ村は旧大陸の最北端に近い位置にあるが、メゼポルタは旧大陸の東端辺りにある。それをなんとほとんど徒歩で移動することになる。
数時間程度では到着するはずがない。というか、数日単位でもどれだけかかるかわからないくらいだ。
そのために食糧は必要以上に持ったし、いざとなれば今の彼なら小型モンスターくらいは難なく狩ることはできる。それを食糧にすればよい。
よって今のセリフは嘆きの意味などではなく、単なる独り言。
そもそも彼はこの日のために数年間、厳しい鍛錬に励んできたのだ。根性は人並み以上に強い方である。
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