3/5
前へ
/5ページ
次へ
「…おはようございます」 ドキドキがハンパない。 恐る恐る職場のドアを開け、中にいる人たちに挨拶する。 職場の人たちはみな、私の方を見ることもなく 「おはようございます」 と、答える。 「…歩邑です。長くお休みをもらってしまってすみませんでした。本日から出社させていただきます」 誰もこっちを見てくれないまま、私がそう続けると、やっと上司がこちらを見てくれた。 「…あぁ、うん、…ん?…」 上司が返事に詰まった。 きっと私が歩邑だと…いや、ほむらだと気がつかないのだろう。 そう思った私はどや感に満ちあふれながら、颯爽と上司のデスクの前に立った。 「今日からまたよろしくお願いします」 そう言う私を、上司は戸惑いを隠せない表情で眺めている。 そうか、こういう反応も悪くない。 そう思ってにやけてしまった私を、次の瞬間上司が、どん底へと叩き落とした。 「あれ?ほむらさんは、自主退職したんじゃなかったっけ?」 「えっ?」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加