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アパートに帰りつくまでに、何度もめまいがした。
「あ、うちの会社は、自己都合の退社は、退職金、出ないから。そういう規約だから」
上司が最後に私に投げつけた言葉。
どうしてそうなってしまったのか分からない。
ちゃんと休暇届けを出さず、部長に口頭でお願いした自分が馬鹿だった。
口下手が災いした。
気の小さい私が、誤解ですと上司に詰め寄ることなど出来るわけもなく、
「そ…そうなんですか」
と言って、すべてが終わった。
社員数名の小さな会社。
私のような醜悪な容姿の人間を雇用してくれるなんて、なんて素晴らしい会社だろうと思っていた。
それなのに、なんでこんなことに…。
アパートにたどり着いた私は、なんとか気持ちを落ち着けようと、机の上に置いていた手鏡を覗き込んだ。
ヘビデブと呼ばれていた頃の面影は、どこにもない。
きっと大丈夫。
この顔を見たら、なんだかそんなような気がした。
可愛くなったんだから、次の就職先なんてすぐに見つかる。
…と思う!
顔を変えただけて、こんなにもポジティブになれるなんて思っていなかった。
とりあえず、今からハローワークに行って来よう。
そう思い立つと、私はすぐにまた、外へと飛び出していた。
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