1人が本棚に入れています
本棚に追加
ハローワークは、思っていた以上に混んでいた。
駐車場待ちの車が、建物の前の路肩に、長蛇の列を作っている。
あいにく車の免許を持っていない私は、その車の列を横目に、早足でハローワークに乗り込んだ。
ハローワークの受付は建物の2階。
ここにもやはり、長蛇の列ができている。
しばらく並び、受付で番号札をもらうと、その番号と同じ席に腰かけた。
目の前のパソコン。
年齢を入力する手が震える。
40歳。
この年齢での再就職は、簡単ではないだろう。
しかし、7万6千円というアパートの家賃のことを考えると、正社員という選択肢を選ばざるを得なかった。
「えっと…」
必要事項を入力し、募集内容に目を通す。
医療系や介護系の募集が多い。
ずいぶん偏った職業しか募集がかかっていないんだな…とため息が出た。
接客が苦手な私が希望する職種は、一般事務。
もしくは、工場勤務。
しかし工場はどこも駅から離れた場所にあるため、車の免許を持っていない私には通勤が苦痛になるだろう。
よって、希望する職種は、一般事務のみ。
手取り20万円以上で、交通費が出て、ボーナスあり。
そんなところがあればいいなぁ…。
誰でもはじめの頃は、そんな風に、自分の希望ばかりを優先させるだろう。
しかし、現実はそううまくいくものではなかった。
「新卒…か、これはダメだ」
「普通自動車免許がいるのか…これもダメ…」
「住宅展示場の事務…あ、接客ありだ…それだとダメだ…」
「医療事務…は、無理。ダメだわ」
心の中で、「ダメ」という言葉だけが繰り返えされる。
ない。
私の条件に合う、都合の良い募集は、一つもい。
結局、選択肢をフルタイムのパートに切り替えて、もう一度検索し直してみた。
が、社員で探していた時と同じ企業が、条件をパートタイムに変えただけの募集しか引っ掛からない。
せっかく顔を変えたのに。
全然なんにもうまくいかない。
そう思うと涙が溢れだしそうになった。
最初のコメントを投稿しよう!