魔法学校は9月入学。

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「これ、どういう意味だ?」 「文字通りの意味だ。 文字が読めないのなら謝るが、そうではあるまい?」 オレは机に紙を叩きつける。 その紙の表面には「遊部を監視し、学校に有益な組織となるよう誘導せよ」と印字されていた。 「オレにスパイをやれって意味なら、答えはNOだ」 とたんに肩を震わせて笑いを噛み殺す会長。 ……いちいちムカつく人だな。 「いやいや、それほどオフィシャルな意味はないよ。 彼女たちが問題を起こさないよう、それとなく良い方向に導いてくれということだ」 さらに小馬鹿にした調子に変わり、 「スパイ……君が遊部を裏切るほどの忠誠心を生徒会に対して持ってくれるなんて蚊ほども思ってはいないよ」 生徒会全員――耳が聞こえない会計は除いて――笑い出す。 なんか1人で騒いでバカみたいだ。 ついでにかなり恥ずかしいし。 「分かってくれたなら落ち着いて座りたまえ。 生徒会庶務の隣に席はある」 オレは黙って従い、生徒会の人たちより圧倒的に品質が悪い椅子に腰かける。 鉱輝はすでに書記の空席――夏の事件が原因で辞めさせられた――の隣、オレと同じ簡素な椅子に座ってコーヒーを飲んでいた。 ……少しは加勢しろよ! 「さて、自己紹介などもう必要ないな。後は新しい書記が来れば……」 「ちょうどやってきたみたいですよ」 庶務がペンを回しつつ言う。 すぐにドアが開いた。 「リカルドーーー!!!」 弾丸のように会長に向かって飛んでいった少女は、抱きつく寸前で会長が作った氷の壁にゴンッ!と盛大な音を立てて激突し、倒れて後頭部をガンッ!と派手にぶつけて息絶えた。 この間わずか2秒。 なんてスピードだ……。 しかし少女は数秒で復活すると、会長に指を突きつけた。 「何をするのですか! この私(わたくし)が抱擁をしてあげようというのに!」 そこで始めて彼女の姿が視認できた。 口調と違って、なんというか……とてもここの生徒とは思えないほど幼い感がある。 サラサラの金髪の上にはリボンが付いていて、真っ平らな胸の前にはロケットをぶら下げている。 くりくりっとした瞳はスカイブルーで、フランス人形みたいだ。 背もずいぶん低いし……10歳くらいじゃないのか!?
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