魔法学校は9月入学。

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「いりません。 黙って席に座って下さい」 なぜか敬語の会長。 しかし少女は強烈な言葉で反抗した。 「座ってマイスウィートエンジェルと言ってくれたら座ってあげますわ」 とたんにその場にいた全員が吹き出しそうになる。 あの固い会長がそんな横文字を喋った日には学校新聞に1面で載るだろう。 会長はたっぷり数秒間固まった後、怒りを抑えた声で言う。 「じゃあ一生立ってて下さい。 ……諸君、彼女は新しい生徒会書記で」 「リカルドの婚約者ですわ」 居ないがごとき扱いで話を進めようとしたが、無視できない一言を放つ。 全ての音がピタリと止み、全員の視線が会長に集まる。 彼はしばらく、書記に向かって鋭い眼光を投げつけていた。 常人ならダッシュでその場から離れるレベルだが、彼女はニコニコ顔だ。 「……ふぅ。 エミリーは親同士が勝手に決めた結婚相手だ」 やがてため息をついて説明を始めた会長。 彼女は嬉しそうな顔をしている。 「私も彼女も貴族の血を引く由緒正しき家柄でな、面倒なしがらみが腐るほどある。 ……いや、すでに腐っているかも知れんな」 苦々しげな顔をして、エミリーさんの方をちらりと見てから、 「だが私は大人しく家に従うつもりはない。 どうせ家も継げぬ次男坊、追い出されようと構わん」 キッパリと言い切った。 エミリーさんは嬉しそうな顔のままフリーズする。 話は終わりとばかりに、机の前に座ってパソコンを立ち上げつつオレたちに言う。 「そういうわけだから、そこの補佐2名、今から見回りにでも行ってこい」 「……待ちなさいリカルド。 今のはどういう意味ですか?」 「言った通りの意味です。耳が聞こえないなら謝りますが、そうではないでしょう?」 「ムキー、怒りましたーーー!!! 今すぐそこに座りなさい!!!」 「すでに座っています。仕事がありますので」 怒鳴りつける書記ことエミリーさんと、かわしつづける会長ことリカルドさんのやり取りが聞こえてくる中をオレたちは1つしかないドアに向かって歩いて行った。
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