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―プロローグ―
「おはよーう! みんな久しぶりやなー!」
スカイブルーのショートヘアーに、薄茶色の瞳。 今はちゃんとボタンを留めた制服に、丈が短めのスカート。
特徴のある訛りを持つこの少女の名前はリンス・クラウディ。 トラブルメイカーな存在であるため、クラス長とはぶつかり合うことが多かったが、夏の出来事をきっかけに少し仲良くなったようだ。
「おはよー、リン」なんて声がクラスメイトから帰ってくる。
三年に進級し、クラスのメンバーも変わったが、「リン」の愛称で知られるみんなの人気者であるこの少女には関係ない。
「……ん? 今年は一緒か!」
教室中を見回していたリンが、一つの机で視線を止め、顔を輝かせる。
その先には、糸で閉じられた古そうなノート――と言っても厚さは本並みだが――をパラパラとめくる少女がいた。
クセの強い長い黒髪と、深い夜色の眼。 気配の無さは、親友のリンですら時折気づかないほど。
真面目な生徒だが、筆記は中の上、実技に至っては赤点ギリギリを毎学期狙ったようにもらっている。
リンと同じレベル4の保持者であり、所属も同じ『遊部』。
ルナミス・E・スカーレット――ルナが、今年は同じクラスだった。
「そうや! ルナ! あんたに聞きたいことあってん!」
つかつかとルナの元に歩み寄り、机をバンと叩くリン。
ルナは本を叩かれないようサッと持ち上げてから、リンの方を向き、目をパチクリ。
「……おはよう」
「おはよー……ってちゃうわ! アンタなんでレベル5の実技サボったんや!」
「……用事」
それだけ言うと、視線を本に戻すルナ。
ちなみに、魔法資格の試験は 一次が筆記、受かれば二次の実技になる。
「試験サボらなあかん用事ってなんやねん!」
「……じゃあ熱」
「『じゃあ』って何!?」
「……40度」
「ウソつけ!!!」
「新学期早々騒ぐんじゃない!」
「げっ……クラス長」
怒鳴り声の主を見て、辟易するリン。
かなり明るい茶髪のショートに、美しい顔立ちと灰眼を有するこの少女の名は、瀬崎 魅世(せざき みよ)。
制服のスカート、そのベルト部分に真剣を差したりりしい姿は、 その男らしさと相まって、男女問わず憧れの的である。
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