魔法学校は9月入学。

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        ―プロローグ― 「おはよーう! みんな久しぶりやなー!」 スカイブルーのショートヘアーに、薄茶色の瞳。 今はちゃんとボタンを留めた制服に、丈が短めのスカート。 特徴のある訛りを持つこの少女の名前はリンス・クラウディ。 トラブルメイカーな存在であるため、クラス長とはぶつかり合うことが多かったが、夏の出来事をきっかけに少し仲良くなったようだ。 「おはよー、リン」なんて声がクラスメイトから帰ってくる。 三年に進級し、クラスのメンバーも変わったが、「リン」の愛称で知られるみんなの人気者であるこの少女には関係ない。 「……ん? 今年は一緒か!」 教室中を見回していたリンが、一つの机で視線を止め、顔を輝かせる。 その先には、糸で閉じられた古そうなノート――と言っても厚さは本並みだが――をパラパラとめくる少女がいた。 クセの強い長い黒髪と、深い夜色の眼。 気配の無さは、親友のリンですら時折気づかないほど。 真面目な生徒だが、筆記は中の上、実技に至っては赤点ギリギリを毎学期狙ったようにもらっている。 リンと同じレベル4の保持者であり、所属も同じ『遊部』。 ルナミス・E・スカーレット――ルナが、今年は同じクラスだった。 「そうや! ルナ! あんたに聞きたいことあってん!」 つかつかとルナの元に歩み寄り、机をバンと叩くリン。 ルナは本を叩かれないようサッと持ち上げてから、リンの方を向き、目をパチクリ。 「……おはよう」 「おはよー……ってちゃうわ! アンタなんでレベル5の実技サボったんや!」 「……用事」 それだけ言うと、視線を本に戻すルナ。 ちなみに、魔法資格の試験は 一次が筆記、受かれば二次の実技になる。 「試験サボらなあかん用事ってなんやねん!」 「……じゃあ熱」 「『じゃあ』って何!?」 「……40度」 「ウソつけ!!!」 「新学期早々騒ぐんじゃない!」 「げっ……クラス長」 怒鳴り声の主を見て、辟易するリン。 かなり明るい茶髪のショートに、美しい顔立ちと灰眼を有するこの少女の名は、瀬崎 魅世(せざき みよ)。 制服のスカート、そのベルト部分に真剣を差したりりしい姿は、 その男らしさと相まって、男女問わず憧れの的である。
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