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そんな女子達を冷ややかな目で睨む露助だが、女子達は気付かずサッカー部員にキャーキャーと声を送る。
「・・・行こう、露助っち」
「・・・うん」
心の中で「馬鹿女が」と毒づきながら、露助は自動販売機へ急ごうとした時だった。
突然、再び、露助の動きが止まった。
ハッと見開いた瞳の先。
露助の目には、それが能萬高校という(言い方は悪いが)露助達にとっての「ごみ溜めのような場所」に咲いた一輪の花のようにも見えた。
清楚なイメージを持たせる白衣から覗く、ピンクのセーターと黒いスカート。
ピンと外に跳ねた栗色の髪に、蒼いサファイアのような瞳。
露助達よりも少し背が高く、「きれいなお姉さん」を形にしたような女性。
露助には、彼女が聖母のように見えた。
「あら、露助くんと桂太くん」
「あじゅっ・・・小豆先生ッ!?」
彼女の言葉に、露助は緊張からか、挙動不審になってしまう。
サッカー部の時のマシーンっぷりは何処へやら・・・。
露助の心を動かした彼女の名は「市浦小豆(しうらあずき)」。
二年前、露助が入学したのと同じ時期に入ってきた保険の先生で、現在露助が片思いしてる相手でもある。
「ちゃーっす先生」
彼女に対してとくに思う事はない桂太は普通に返事をする。
あくまで「綺麗な先生だな」と思ってる程度である。
「あら・・・?」
小豆先生が、露助の左頬が腫れているのに気付いた。
あの時、サッカー部員にリンチされたのが原因だろう。
「露助くん!頬っぺた腫れてるよ!?どうしたの?!」
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