第一話:山林の巨人

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そんな女子達を冷ややかな目で睨む露助だが、女子達は気付かずサッカー部員にキャーキャーと声を送る。 「・・・行こう、露助っち」 「・・・うん」 心の中で「馬鹿女が」と毒づきながら、露助は自動販売機へ急ごうとした時だった。 突然、再び、露助の動きが止まった。 ハッと見開いた瞳の先。 露助の目には、それが能萬高校という(言い方は悪いが)露助達にとっての「ごみ溜めのような場所」に咲いた一輪の花のようにも見えた。 清楚なイメージを持たせる白衣から覗く、ピンクのセーターと黒いスカート。 ピンと外に跳ねた栗色の髪に、蒼いサファイアのような瞳。 露助達よりも少し背が高く、「きれいなお姉さん」を形にしたような女性。 露助には、彼女が聖母のように見えた。 「あら、露助くんと桂太くん」 「あじゅっ・・・小豆先生ッ!?」 彼女の言葉に、露助は緊張からか、挙動不審になってしまう。 サッカー部の時のマシーンっぷりは何処へやら・・・。 露助の心を動かした彼女の名は「市浦小豆(しうらあずき)」。 二年前、露助が入学したのと同じ時期に入ってきた保険の先生で、現在露助が片思いしてる相手でもある。 「ちゃーっす先生」 彼女に対してとくに思う事はない桂太は普通に返事をする。 あくまで「綺麗な先生だな」と思ってる程度である。 「あら・・・?」 小豆先生が、露助の左頬が腫れているのに気付いた。 あの時、サッカー部員にリンチされたのが原因だろう。 「露助くん!頬っぺた腫れてるよ!?どうしたの?!」
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