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目尻が垂れ下がり、口は耳に届く程に裂け、細く長い舌は蛇のように蠢いています。 「いぃ、ごこちがぁ良く、えぇ……あな、たの“気”、おおぉ、ぃしそうぅぅ……っ」 不明瞭にくぐもった声、土気色になった顔の中身が崩れ落ち、枯れ木のような腕がカウンター越しに伸びて来て、僕は後ろに立っていた凛さんに引っ張られました。 「慶太さんに触らないでよ、ばーか!」 僕の腕にしがみつきながら、あっかんべーをする凛さんを見て、ああ綺麗な顔は目の下の皮を多少引っ張り下ろしたくらいじゃ揺らがないんだなあと感心しました。 「はい、どーん」 蓮君が、ポケットから出した数珠を巻きつけた手で、お客様の脳天らしき所にチョップをかましました。 「慶太さんに触ろうなんて10億万年早い。愚か者」 「おぉぉまあえ、ぇぇ」 文字通り、鬼気迫る顔で振り向いたお客様のおでこ辺りに、もう一回チョップ。 「邪魔をぉぉす、る、あぁ」 「うるさい」 蓮君は無表情のままに、右手を横に払いました。 「ぎ、やあ、ぁぁああ……っ」 上下二つに裂かれたお客様は、苦悶の表情を浮かべながら、煙の中に消えました。 これまでに何度も見た光景ですが、あまり慣れることはありません。 いつも、少し悲しい気持ちになります。
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