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静けさが戻った店内を見て息を付くと、蓮君は、祖父から譲り受けたという数珠を再びポケットにしまい、僕の顔を心配そうに覗き込みました。
「大丈夫ですか、慶太さん」
「ありがとう、蓮君。いつもすみません」
申し訳ない気持ちで頭を下げました。
僕自身でもそれなりの対処は出来るのですが、「そう」するまでのジャッジが遅くて、いつも蓮君に助けてもらうことになってしまっています。
「だから最初から消しておけばよかったのに!蓮のバカ!」
僕の腕に抱きついたまま地団駄を踏む凛さんに、慌てて首をふりました。
「違うんです、凛さん。僕がお願いしたんです。何もしないうちは、ただのお客様ですから。この店に惹かれて来てくれたのなら、それは嬉しいことなんです」
「でも……だって、ああいう汚いの、慶太さんに見せたくないんだもの……」
俯いて唇を尖らせる凛さんの頭をポンポンと撫でました。
「ありがとう。君達は優しいですね」
「違う。優しいのは慶太さんだ」
憮然と立つ蓮君の頭も、くしゃくしゃと撫でました。
それから、先ほどまでお嬢さんが座っていた席を見やり
「……飲んでもらえませんでしたね」
手つかずの珈琲に息をつくと「(俺)(私)が飲みます」と綺麗なユニゾンが返ってきました。
そして蓮君がいきなり、僕の首元にガシと抱きついてきました。
「蓮君、どうしました?」
「ちょっと、唐突に独占欲が」
「ずるい、蓮!私も!」
僕は苦笑しながら、やんわりと二人の背中に手を回して抱き寄せました。
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