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このレトロな喫茶は、幅広い層に愛されています。
そして僕の「気」は、特定の層に引っ張りだこです。
先ほどみたいなお客様が、たまにご来店されます。
もちろん、普通の人間のお客様も来てくれます。
でも先日、僕にお手紙をくれた可憐な女子大生のお客さんは、お人形のように可愛らしい凛さんからの低い耳打ちに身を震わせ、急いでお店を出て行ってしまいました。
何を言ったのかは、聞いてません。怖くて。
ただ、あの様子では、もういらしてくれないと思います。
ちなみに手紙は、蓮君に丁寧に没収されてしまったので、何が書かれていたのかは謎のままです。
お店へご意見を下さったのかもしれませんし、もしかしたら、蓮君への橋渡しを頼むものだったかもしれません。
「蓮君、あの手紙にはどんなことが書かれていましたか?」
ある時そっと聞いたら、蓮君はふるふると首を振りました。
「慶太さん宛の手紙を、勝手に開けるわけには行きません」
「…なるほど。じゃあ、僕に開けさせてもらえませんか?」
「あまり開けて欲しくありません。だってラブレターだから」
真剣に顔をしかめるものだから、思わず吹き出してしまいました。
「蓮君を差し置いて、僕が貰うわけないでしょう」
「…………」
蓮君は絶望的な顔で僕を見つめて、そして大きなため息をつきました。
「蓮君?」
「……自分の魅力をわかってないところも好きですけど、危なくてしょうがない」
「え?」
「なんでもありません。とにかくあの手紙も、今後貰う手紙もすべて俺が預かります。あと、誰かに直接何かを言われたら、返事をする前に俺か凛に言って下さい」
「え、でも……」
「いいですね?」
真顔で首をかしげる蓮君に、僕は戸惑いながら、結局うなづいてしまいました。
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