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ジェダイトのメンバーを乗せた車が到着したのは山中奥深くに位置する西洋の城をモチーフにしたペンションだ。
さすがに山中とあって夜は底冷えしそうだが、建物自体の作りはもちろん、自然に囲まれていて写真集のロケーションとしては最適な場所だった。
重厚感があって女の子なら一度は憧れるであろう場所である。
「やっと到着かぁーっ!」
レイは車から降りるなりぐーっと伸びをした。
普段、都会の空気に慣れてしまうと山の澄んだ空気は清々しくて気持ちがいい。
「俺たち、ここに泊まんの?」
「はい、そういうことになります。今回は撮影のために貸し切りにしてありますから」
「マジ?貸切?ひゃっほーい!」
「すげーとこだな。って、うっわ。寒っ!」
シズキは外気の予想外の寒さにぶるぶると震えた。
サチも少し辛そうだ。
「早く温かいところ行こうよ」
だが、寒さに凍えそうな二人と違ってやけに元気なのはノアだ。
「えーなんかいいじゃん。確かに寒いけど空気美味しいし」
「ノアは寒いとこ苦手だったんじゃねぇの?」
「苦手だけどシズみたいに軟弱じゃないからー」
「…軟弱で悪かったな!」
「そういえば、そろそろ腹も減ったよな」
「レイ、あんまり食べるとまたお腹出るよー」
「またってなんだよ、またって!」
「僕もあんまり食べないようにしようかなー」
「いや、サチ。お前は食っとけ。むしろ細すぎだ」
「えっ!」
「お前の場合、ちゃんと食わないから体調崩すんだぞ」
「ハハハ」
ヒビキは和やかな雰囲気の彼らにふふっと笑う。
なんだかんだナマイキだけど、こうやってしていると普通の男の子なんだなって思う。
仲がいいのもこのバンドの良さの一つだろう。
「で、ヒビキ。オレらはどこに行けばいいの?」
シズキに尋ねられてヒビキはハッとした。
和んでいる場合ではないのだ。
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