事の発端

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「本気なの?」 「…本気って何が」 「秋マネのこと」 ノアに尋ねられて、シズキはわずかに考え込んだ後に呟いた。 「…だったらなんだよ」 きっとまたノアに何か言われると思って躊躇ったのだろう。 しかし、彼の口から出たのは意外な言葉だった。 「そんなに本気ならボクが力を貸してあげよっか」 「ハ??力を貸すってどうやって」 するとノアは自信満々ににっこりと笑った。 「ボクさー得意なんだよね」 「何が?」 「人の幸せ壊すの」 「…悪い冗談はやめてくれ」 ふと、目を前へ向けると助手席で楽しそうに笑うヒビキの横顔が見える。 決して仕事では見せたことのない顔だ。 シズキは湧きあがる嫉妬心を抑えながら、渦巻く感情に戸惑っていた。 ―人の幸せを壊す、か。 「なんかいろいろと楽しい旅になりそうだねー」 シズキの戸惑いなど知らず、ノアは無邪気に笑う。 そしてその笑顔の裏に隠された思惑をまだ誰も知らなかった。
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