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するとシズキは不敵な笑みを浮かべ、窓ガラスに腕をつくと更に彼女に迫った。
―ちっ、近いってば…!
彼女は怖くなってシズキの肩をぐっと押して強引に体を引き離そうとしたが、びくともしない。
年下だし、男の割に線の細い体つきをしているのにやっぱり彼は“男の人”なのだと気づかされる。
「慌てちゃってどうしたの?少しはオレにドキドキした?」
「そんなわけ…」
必死に平静を装って否定したけれど、言葉とは裏腹に今頃耳まで真っ赤になっている気がする。
―落ち着け、私。相手はシズキくんだよ?
「そんなことよりもこんなところで何やってるんですか?メイクはこれからでしょ!?早く…」
「なんだよ。そんなにオレを厄介払いしようとしなくたっていいじゃん」
「別にそういうつもりはないけど…」
「ヒビキってさ、彼氏がいるって割には本当に男に免疫ないよな。耳まで真っ赤」
―やっぱり!
「でもまぁ、そんな純なところが可愛いんだけど」
「またそうやって人をからかって面白がるつもりでしょう!?」
ヒビキが口を尖らせて言うと、シズキから笑いが消えていつになく真剣な表情になった。
「からかってなんかない」
「嘘!だっていつも…」
「ヒビキはそうやっていうけど、オレはいつだって真剣だよ」
そういって彼は強引にヒビキの唇を奪った。
―…!!!!!!
「んっ!」
ヒビキは力いっぱいシズキの体を突き飛ばした。
あまりにも突然の出来事に驚き、状況を理解するのに時間がかかった。
「…ぃって!」
「何するの!?」
「オレ、ヒビキのことすっげぇ好きだよ」
「人間として、でしょ?」
「女として」
「いや、でも…」
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