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「オレさ、カッコわりぃけどヒビキに彼氏がいるって知って今すげー嫉妬してる。だけど彼氏がいるから諦められるほど大人じゃねぇし、とりあえず気持ち伝えなきゃって思った。もう隠すのはやめだ。今のオレはヒビキから見たらまだまだガキかもしれない。頼りないかもしれない。でもヒビキを幸せにしてやる自信はあるから!」
シズキの思わぬ告白にヒビキは戸惑った。
―嘘でしょ。
「でも私にはトモくんがいるし、シズキくんのことは考えられないよ」
「わかってる。今はそれでいい。けど、絶対に惚れさせてやるから。オレ、全力で行くって決めたから」
それはまるで宣誓布告のようだった。
「全力でって…」
―勝手に決められても…。
しかし、ヒビキの意思とは関係なく彼の意志は固まったようだ。
「あ、先に言っとくけど変にオレを避けたりすんなよ。避けたりしたら余計にまとわりついてやるから!」
「そんな勝手な…」
「オレがそう決めた」
シズキはそういって強引に話をまとめるとにっと悪戯な笑みを浮かべた。
その無邪気な笑顔にヒビキは憎めないなぁと呆れてしまう。
「じゃ、オレ戻るから」
何事もなかったように笑顔を残して去っていくシズキにはヒビキは複雑な笑みを浮かべる。
―まさか、私のこと…そんな風に見ていたなんて。
あんなにキレイな男の子に好かれて悪い気はしないが、ずーんと心が重くなった。
告白されただけならまだしも、トモハルに一つ隠しごとができてしまった。
―キスされた、なんて言えないよなぁ…。
ヒビキは胸に大きなざわめきを感じながら、中庭へと向かったのだった。
この時、彼女は気づいていなかった。
トモハルが中庭から二人を見上げていたということを。
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