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いっそ、彼女だからと邪魔してしまおうか?
だけど仕事とプライベートを混同しているとも思われたくはない。
「アッキー。そんな悲しそうな顔すんなよ」
「だって」
ちょっと泣きだしそうなヒビキの様子にレイは困ったような顔をした。
「わーマジで泣くなよ?俺たちがからかいすぎたのは悪かったって!!」
「彼女がこんなに男に囲まれてるのに気にしてない彼氏も彼氏だと思うけどねー。いくら仕事の相手とはいってもボクたちも男なのにね。自分は自分で彼女ほったらかして女の子と楽しそうだしさー」
ノアはさめざめと言った言葉がヒビキに突き刺さる。
「うー」
「いっそ、別れちゃえばいいのにー」
「別れません!」
そうはいったものの、ヒビキの不安は広がるばかりだった。
*
バーベキューハウスに集まったトモハルは真っ先にヒビキの姿を捜していた。
そこはスタッフもアーティストも関係なく入り乱れ、打ち上げを思わせる雰囲気で夕食が進められている。
「敦賀くん!」
そこに唐突に声をかけられる。
振り返るとそこにいたのはさっき現場で仲良くなった若手男性スタッフの浪岡(なみおか)だ。
年の頃は自分より少し若くヒビキと同じくらいかもしれない。
「ああ」
「ねー敦賀くん、せっかくだから一緒に飲もうよ」
ビール瓶を片手に彼が誘う。
「あー今はちょっと…」
「いいじゃん、早くー!」
浪岡は話も聞かず、強引にトモハルを引っ張っていき隣に座らせた。
目の前に差しだされたコップには小麦色の液体が注がれて、会場を漂う肉の焼けた匂いが食欲をそそる。
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