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「ほら、乾杯!」
「えっ、ああ、乾杯」
気がつくといつの間にかトモハルは彼のペースにのせられてしまっていた。
本当はヒビキを捜したいのに、そうはさせてくれないらしい。
その時、きょろきょろと視線を彷徨わせているヒビキの姿を見つけた。
―ヒビキ!
彼は声をかけようと立ち上がったのだが、あと少しのところで何者かに視界を塞がれる。
「ヒビ…」
「あのー、ここ座らせてもらってもいいですか?」
彼の目の前に現れたのは若い女性2人組だった。
「えっ?」
「あーうん!もちろんいいよー!!!」
浪岡はトモハルの言葉を遮って嬉しそうに彼女たちを向かいの席に座らせた。
美人の登場にご満悦のようだ。
「あれ?敦賀くん、どこか行くの?」
そう尋ねられてヒビキに視線を戻すと、彼女はシズキに肩を抱かれ強引に連れて行かれてしまった。
―また、あいつか!ヒビキも何で嫌がらないんだ??
わずかに怒りを覚え、トモハルは拗ねてそのまま席に座りなおした。
すると急に向かいの女性たちが喋りだす。
「あの!わたし、メイク担当の城山みほこです!!」
「あたしはスタイリストの乃木っていいます」
―自己紹介?
合コンでも始まるのかとトモハルは苦笑いを浮かべた。
だが、浪岡は待ってましたとばかりに食いついた。
「僕はロケアシの浪岡で、彼は…えっとドライバーだっけ?」
「臨時ですけど」
「…の、敦賀くん!」
「敦賀…さん。あの、臨時のドライバーってどうして?」
「事務所のスタッフさんってわけじゃないんですか?」
「ああ、オレは…普通のサラリーマン。たまたま声がかかって今回だけ臨時のドライバーをやることになったけど」
「へー珍しいですね」
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