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「なんだよー二人とも敦賀くん狙い?おれかと思って期待してたのに」
浪岡は隣でがっくりと頭を垂れた。
「あんた、鏡見たことある?」
乃木が浪岡に冷たく言ってのけると彼はふうとため息をついた。
「そりゃあおれはチビだし、別にかっこいいわけでもないですけどー。それに比べて敦賀くんは身長もあるし、そこそこイケメン…なんてこった」
「でしょ?」
「でしょ、じゃないっスよ!この業界にいればすぐに可愛い彼女ができると思ってたのにー!!!」
「んなわけないでしょ。甘いわよ!」
しかし、そんな浪岡と乃木の会話もトモハルの耳にはろくに入ってこなかった。
そんなことよりもやはり気になってしまうのはシズキにべったりとくっつかれたヒビキのことだ。
―やっぱり、ヒビキのことが気になる。
とはいっても彼女のことを思うと大っぴらに付き合っていることを明かすのは得策とは思えないし、彼女たちを冷たくあしらうのもためらわれた。
―困ったな。
「オレ、ちょっとトイレに行ってくる」
なんとか彼女たちの手から逃れようとトモハルは席を立った。
できるならシズキを引っぺがしてやりたい。
「早く帰ってこいよー」
「ああ」
トモハルは気のない返事を残してトイレへと向かった。
さすがにこれ見よがしにヒビキのところへ行くのはどうかと思ったからだ。
だが、彼がトイレから出ていざヒビキの元へ向かおうとすると背後から誰かに呼び止められる。
「敦賀さん、どこに行くんですか?」
「!!」
振り返ると視線の先に飛び込んできたのは城山の姿だった。
どうやら彼女はわざわざ待ち伏せをしていたらしい。
「何でここに?」
「ちょっと敦賀さんとお話ししたくて」
そういって彼女は笑顔のまま腕を絡ませてきた。
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