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「やめてくれないかな。さっきも言ったけどオレ、彼女いるから…」
「でも彼女が見てるわけじゃないしいいじゃないですか!」
―いや、近くにいるんだよ。その彼女が!
「もしかして秋川さんにバラされたら困るとか思ってます?大丈夫ですよ、彼女ならわざわざ言わないと思いますよ?」
―その秋川さんが彼女なんだけど。
「あのさ、お前…」
「別に浮気したってわけじゃないですし、これくらいいいじゃないですか」
雰囲気はほのぼの系だが、城山のその行動力と発言は大胆だ。
そしてそんなとき、偶然にトイレへやってきたヒビキと鉢合わせてしまう。
―ヒビキ!
タイミングは最悪だ。
「あ…」
目の前で彼氏が堂々と他の女と腕を組んでいるのを見て、わずかに彼女の表情が曇るのがわかった。
悲しんでいるのか、怒っているのかわからない顔つきだ。
「敦賀さんと城山さん、仲良さそうですね」
ヒビキは皮肉をこめて言ってやった。
すると城山はキラキラした笑顔を浮かべて返事をする。
「はい!さっき仲良くなったんですよーっ!」
―なんなの?
ヒビキはイラッとしながらも必死に堪えて笑顔を作った。
「あ、秋川さん。敦賀さんの彼女さんが心配するといけないんで、このことは内緒にしておいてくださいねー!」
―ってか、私がトモくんの彼女なんですけど!
いっそはっきりと言ってしまいたい。
だけど、言えない。
それは自分にも後ろめたい秘密があるから。
―トモくんが他の女と腕を組むくらい我慢しなゃ。
その時、トモハルとヒビキの視線がバチンと合った。
「ト…敦賀さん、美人さんと仲良くなれて良かったですね」
「別に仲良くなんか…!」
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