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搦手高校二年の男子、柊詩音が天魔の一人である“死神”に出会ったのはバイト帰り、降りしきる豪雨の中だった。勿論この時点で柊詩音は天魔も知らなければ死神という存在も信じていなかったけれど。
傘も差さず。
豪雨に撃たれ。
傷だらけの状態で。
瀕死の状態で。
アスファルトの上に、水溜りの上に倒れていた。
この時一般人である詩音は天魔という存在なんて知る筈もなく、目の前で無様に倒れている男がただの人間の男にしか見えていなかった。
「大丈夫っすか……!?」
ボロボロの男を前に詩音も立ち止まり、声を掛けずにいられなかった。しかもよく見れば傷どころの話ではない、体のあちこちに殺し合いでもしたのかという風穴が出来ている。何を着ていたのかも原型が留めていないせいでまったく判別できない。
声を掛けられ男は震えながらこっちを見てくる。最後の力を振り絞っているのだと詩音でも分かる。
血の気の失せた顔、今にも崩壊しそうな体を食い縛っている歯。
「待ってくれ、今救急車を」
「人……間……」
何か伝えようとしている。
雨の音に邪魔をされないよう、極力体を近づける。近づけて、喋ろうとする男の言葉を逃すまいと口の動きを注視する。
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