波乱な日々

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   川辺で見ていたレインは、悔しかった。  磔にされボロボロになっていくエンを、それでも歯を食いしばって耐えるエンを、誰もが嘲笑い、誰も助けなかった。  今ここで、レインが助けに入ればエンが怒るだろう。  それでも、レインは妹として家族として兄を助けたかった。  いや、虎の衣(い)を借(か)る狐のような全帝やギルドマスターの二人を許せなかった。  彼女を取り巻いていた微風は、次第に力をつけていく。  彼女が微かに殺気も込め出した為か、上級魔法よりも弱いが魔力の濃度が濃い下級魔法程度の風は、次第に川辺に咲いていた花弁(はなびら)や葉を巻き込んでいく。  葉は、彼女の魔法で鋭く小さな葉に変わっていく。  その葉に触れた花弁は、細かい塵と化(か)す。  そして、…。  後日、橋の周辺で人々に囁かれ始め恐れ戦(おのの)く出来事があった。  突然現れた突風から鎌鼬(かまいたち)のような葉の攻撃に遭遇したギルドマスターは、服をズタズタに切り裂かれた挙げ句に橋の上でセミヌードと化(か)して泣きながら転移した、と。  一緒にいた全帝は、更に大変だったらしい。  余りに大変で相当死闘だったのかギルドの一室で大人しく治療されている、と。  全帝のローブも服もズタズタに切り裂かれ、顔や手足に切り傷が多数あり、涙目つまり半泣きでギルドに転移したらしい、と。  ギルドマスターと全帝を襲撃した突風は、橋の欄干をボロボロに破壊した後に磔にされていたエンと共に消えた事は、誰も覚えていなかった。  
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