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「そうだよ!」
俺の復唱した言葉に肯定を示すところをみると、聞き間違いではないようだ。
ーー探偵部
この学園に入って一年は経つが、そんな部活は聞いた事もないし、あったとしても入部したくもない。
それをこの女子生徒は、勧誘しに来たと…
いろいろツッコミたい点はあるんだが…まぁまずはこの事からツッコんでおくか。
「なぁ…。」
「うん?質問?
いいよ!何でも聞いて!」
「いや、質問じゃないんだけど…
俺、小野崎 晋助って名前じゃないよ?」
「…………え?」
女子生徒はピタッと体を硬直させて聞き返す。
物分りの悪い女子生徒に俺は若干の苛立ちを見せながら遠慮なしにつっこんだ。
「いや、だから!
俺の名前は“咲枝 集”(さきえ しゅう)であって、“小野崎 晋助”ではない!
そんな名字も名前も4文字4文字の呼びにくい名前じゃないんだよ!」
「…えぇぇぇぇ!?」
女子生徒の甲高い声が教室内に響き渡る。
周りにいたクラスの生徒たちが注目してきて、少し恥ずかしかったが、そんなのも気に止めず女子生徒は話を続ける。
「嘘だよ!絶対嘘だよ!
本当は小野崎 晋助くんなんでしょ!?」
「何で 嘘をつく必要が…?」
「またまた~!
そうやって 私をドッキリさせるつもりなんでしょ~!?」
「いや、だから
お前をドッキリさせて何が楽しいんだよ!
さっきから
何なんだこいつ…?
さっきから華麗なボケをしてくる女子生徒に対し、疑問を感じずにはいられなかった。
「ホントに…
小野崎くんじゃないの…?」
落ち着きを取り戻した女子生徒が上目遣いでこちらを見てくる。
唐突に魅せられるその意外な可愛さに、思わず俺は視線を逸らしながら首を縦に振る。
「う~…またやっちゃった…」
「え? 何って?」
女子生徒が頭をガクッと下ろしてボソッと言った言葉に集が聞き直すが、女子生徒は自分の世界に入っているのか無反応だ。
「おい?大丈夫か…?」
集が心配になって呼びかけると、女子生徒は突然起き上がり「ごめんなさい!人違いでした!」と言って、その場を一目散に去っていってしまった。
一方的に話しかけられて一方的に去っていった女子生徒に、俺はポカンとしてから呟く。
「何だったんだ…あいつ…」
その予期せぬ出来事こそ、俺こと咲枝集が“探偵部”と関わりを持つ全てのきっかけだった。
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