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舞が後ろを振り返ると、そこには茶髪のヘアカラーにポニーテールをした美女が雨羽の前に歩み寄っていた。
「おはよ。朝比奈さん。どしたの?」
そう、彼女こそ舞が苦手とする朝比奈だった。
「どーしたのじゃないわよ!
あんた、あの件は一体どうしたのよ!?」
雨羽が挨拶をすると、いきなり大声をあげて朝比奈は説教を始めた。
今なら私の存在はまだ バレてない。
逃げるなら今だ!
そう思った舞はすぐに正面を向き直し、平然と歩き出そうとした。
しかし、人生というのは自分の思い通りにならない事ばかりだ。
「ちょっと 舞!
どこ行くの?
あなたもこっちに
い・ら・っ・し・ゃ・い・?」
あっけなく朝比奈に見つかり、とても恐ろしい口調で呼び出しをくらってしまった。
「あ、あれ~!
朝比奈さんじゃないですか~!
奇遇ですね~!」
舞はまさに今、朝比奈の存在に気付いたかのように明るい態度をとってごまかす。
だが、相手はあの朝比奈だ。
当然生易しい返事なんて返ってくるわけがない。
「下手な嘘はやめなさい。
あなたが 私を出し抜こうなんて…
音で表すと 3万オクターブくらい足りないわよ。」
「な、何故 音で…?」
朝比奈はにやけながらそう言うと、舞に近づき、片手で首筋を掴んだ。
「ぎゃっ!」
朝比奈さん 怖いです…
ニヤけてるのに目が笑ってない。
「あんた、仕事は?」
舞が冷や汗を浮かべると、朝比奈は目をギラつかせて、今の舞の弱点に直球ど真ん中で攻撃を仕掛けて来た。
それを聞き、体が硬くなってしまう舞。
「何 硬直してんのよ?
あんた、勧誘は…」
「そ、それよりも朝比奈さん!
死後硬直って何で起こるか知ってますか!?
あれはですね!
死後に筋肉の筋原繊維が収縮を続けて…」
「舞ちゃん。お仕事は?」
「うっ…」
舞のごまかしなど、いとも簡単に破られ、朝比奈はまた口元に笑みを浮かべながら、さっきよりも怖い口調で聞いてくる。
「どうなの?」
舞に迫り、掴まれている首筋に力が入る。
「す、すいません…
ま、まだ…で…す。」
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