風と鎖の出会い

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1995年の冬に入りかけていた。 当時、14歳、中学2年、名前は山田 隆生(たかせ)。 いわれのないことや体格、性格のことで所謂いじめにあっていた。 シカトに教科書を捨てられる、リンチに遭う、されてないことと言えば殺されることだけだったかもしれない。 そんな最悪な日々のなか、隆生の大切なペンダントを奪われた。 「こんな女がするようなものを持ってんじゃねぇよ」 「返せよ・・・大事なものなんだよ」 そのペンダントは特別高価なものではなくどこにでもある、普通のシルバーアクセサリーだったが、これを身に着けている間は 虐めにあっても耐えられた。 くるくると指を軸にしてまわしながらそいつは言う。 「なぁ、そんなにこれが大事かよ」 「そうだよ。大事だから返してほしいんだよ」 ピクリとそいつの眉が動いたが隆生は気づかなかった。 「あっそ」 そっけない返事をしてペンダントを差し出す 隆生は直ぐに手を伸ばすが直後に腹部に激痛を感じた。 痛さに思わず膝をつくと、複数の男子から足蹴にされた。 頭や背中に激痛を感じながら耐える隆生、それを見て笑うクラスメイト。 「おっとお前の大事なペンダント落としちまったよ」 確かにペンダントが目の前にある。 必死の思いで腕を伸ばす、と同時にペンダントは踏みつけられた。 さらに煙草の火を消すように何度も踏みにじる それを見た隆生の中で何かがプツンと切れた。 「・・・どけろよ」 「はぁ?何?何言ってるか聞こえねぇよ」 おどけるように周りの男子が言う。 「足をどけろって言ってるんだよ!?」 これまで大声を出したことがない男子が怒鳴ったのだ。 しんと静まりかえりただ一人として動かなかった。 ゆったりと隆生は立ち上がり、目の前の男子に手をかざした 直後、腕に沿って風が巻き上がり、男子を吹き飛ばした。 一瞬で皆を横切り黒板に埋め込まれた彼は、悲鳴どころか呻き声すら上げれず、ずるりと落ち動けなかった。
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