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数日後、クラスメイトは皆隆生を避けるようになった。
当然と言えるかもしれない。
ただ手をかざしただけで風が起き人一人が吹き飛び動かなくなったのだから。 隆生はまた一人になった
クラスの中で孤立し誰にも接しなかった。
「よう、隆生何読んでるんだ?」
皆が恐れる中別クラスの男子が声をかけた。
東 京介という男子だ。
彼のほかにあと三人声をかけてくる生徒がいた。
彼らは孤立していく隆生に構っていく。
隆生もそんな彼らをありがたく思うが、申し訳なくも思った。
彼らも孤立するんじゃないかと心配だったのだ。
しかし彼らは構わず隆生の周りに集まる。
「・・・伝記」
そういってまた文章に目を落とす。
「もう飯だけどお前どうすんの?俺らまた中庭行くんだけど」
「・・・わかった」
ぱたんと本を閉じて教室を出る。
その時にざわざわとざわめくのが聞こえる。
ほとんどは自分のことを指していたが、中には京介のことを指すことがあった。
それが我慢できなかった。
「そんなもんほっとけ」
京介はそう言ってくれているが隆生には苦痛だった。
己に向けられるものもつらいがそれ以上に関係ない友人が言われているのが辛かった。
そしてそのことに対して何も言い返せない自分が憎らしかった。
そうしていくうちに自分の中で抑えきれずに「力」を発散するようになった。
初めのうちは八つ当たりの時、無意識に「力」が出て思った以上に物を破壊してしまう
それが慣れてくるとある程度抑制できるようになったが、ここで問題が起きた。
自分には特別な「力」がある、それを使えばみんな何も言わなくなる。
そう考えた。
それは「力」に頼った解決法だった。
事実「力」を使い、陰口は減ったがより孤独へと導く結果となった。
そして京介たちからも離れた。
何からも関与されず関与せず、己の「力」を誇示する。
そうすれば辛くならない。
それは独りであるということに隆生はある人物との出会いで思いはじめる。
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