選定の刻

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購買は1階だ。 下まで降りるのはめんどくさいが、奏美とは長い付き合いで、恩もある。 オレはのっそりと自分の席から立ち上がり、教室を後にした。 昼休みも半ばと言うこともあり、購買は空いていた。 うちの学校の購買は言わば食堂だ。 生徒100人は入るであろう広間に座席と机が綺麗に並んでいる。 奏美が何か買って来るまで適当に空いてる席を陣取り、奏美を待っていた。 すると、購買広場の向こうの方から何やら騒がしい奴がやってくる。 「創一!!!ここにいたのか。探したぞ」 岸田竜士(きしだりゅうし)。こいつも幼馴染みだ。金髪、身長は俺より少し低い。 何より熱く、いいやつだ。 「なんか用か。」 俺は座ったままケータイをいじりながら。話を聞いてやることにする。 そんな俺の対応と対象に、竜士は何やら焦っているようだ。 「遂に!!来る!!!今日だ!」 来るとは噴火のことだ。 それも大規模な。 小規模な噴火は頻繁にあるので、TVで噴火注意報、火山灰注意報も頻繁にある。 竜士は注意報が発表される度に。 俺に「大規模なやつが来るっ」っと一報入れてくるのである。 その度に起こる噴火は小規模なものなのだが。 「おい。竜士。本当に今回なんだな?」 竜士は激しく首を縦に振った。 「今回はまじだって!山が騒いでんだよ。」 俺はそっと席を立ち、なだめるようにぽんっと竜士の肩に手を置いた。 「竜士。俺たちはもう高校3年だ。現実をもっと本格的に、リアルに、見つめなくてはいけない。起こりもしない事象と向き合って生きていくのは高校2年までだ。」 「そーくんが言うなっ」 後ろから奏美が紙袋に詰まった大量のパンを抱えて、そのうちの一つを口にくわえたまま帰ってきた。 「さっきまでそーくんも火山やらゾンビやら言ってたよ?」 奏美がモゴモゴ口を動かしながら言った。 竜士が目を光らせた。 「そうみんも大きいの来ると思うか?やっぱそうみんは違うわ。山を感じれる逸材ですわ。」 竜士は感動していた様子であった。 俺と奏美はもちろん呆れ返る。 「いや、そうとは行ってないんだけど……」 奏美は苦笑いで答えたが、もう竜士は止められなかった。 「是非とも死なん程度に気をつけてくれ!二人とも。今日の夜だ。夜が怪しい。がっこうが終わったら、すぐに避難の準備をするように!俺は他のやつにも警告を促してくる!では、ご武運をな!」
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